景気の良い業界やプレーヤが増えている業種や業態があると、当該業界・業種・業態で事業を始めようとする方が増えますが、それは、事業を始めようとする際に最も考えることが売上を確保することだからです。ごくごく当たり前の考えですが、ここには2つの落とし穴があります

必ず来る不景気

 事業をやっていると必ず良い時と悪い時があります。業界や業種によってサイクルは異なりますが、景気が良い時と悪い時の経営の仕方はガラリと変わります。

 お金を掛ければ、どんどん売上が上がるのが景気の良い時です。販路を広げる機会でもあり、顧客を増やす機会でもあります。売上を上げる対策をどんどん打ち出すことは、正しい経営でもあります。

 一方で景気が悪くなると、ユーザーが使える資金が減ったり、不景気を乗り切るために積極的な投資を控えるようになります。お金の動きが悪くなるため、市場は縮小していきます。不景気の時は、相対的に中~高価格帯の商品やサービスを提供する事業は売上の確保が難しくなり、相対的に低価格帯の商品やサービスを提供する事業は、ユーザーがシフトして売上が増える場合もあります。

 このように景気にはサイクルがありますが、不景気を乗り越えた事業者が長く続くことは言うまでもありません。もし好景気で損益均衡する事業では、そもそも不景気を乗り越えられないため、事業自体の見直しを図った方が良いでしょう。つまり、経営で最も重要なことは、いつか来る不景気を乗り越えられる体制にしておくことに尽きます。不景気の時に損益均衡であれば、好景気には十分な利益を獲得できるようになります。

好景気に事業を始めた時の2つの落し穴

 景気が良い時は経営力が不足していても、好景気という追い風があって売上を確保できるている可能性があります。そして、更に売上を上げるために事務所を拡張したり、店舗を増やしたり、人員を増やしたりと固定費がどんどん増えていきます。この固定費が落とし穴になります。

 景気は移り変わるものですから、その後、不景気が到来します。売上を上げる経営方針が通用しなくなった場合、どんどん売上が下がる中で、一刻も早く利益を確保する経営方針にピボット(転換)しなければなりません。しかし、この固定費が大きな足かせになり、一気に資金繰りを悪化させます。固定費には、半年間や1年間の賃貸契約や人員の削減など、簡単には削減できないものが多いのです。特に好景気に初めて事業を始めた場合、簡単には固定費が削減できないことを身をもって体験していないことから、固定費をどんどん増やしてしまったという状態があり得るのです。

 もう一つの落とし穴ですが、特に好景気に初めて事業を始めた場合、方針転換が遅れる可能性が高いのです。それは、好景気の中で積極的な投資で売上を上げてきた成功体験がある中で、利益を確保するための消極的取組を経験していないため、規模縮小や人員削減を躊躇してしまい後手に回ってしまうのです。最悪の手としては、成功体験の神話を信じて、売上を戻すには積極的な投資だと無理矢理実行し、負債だけが増えて返済できず、倒産に至ることです。

経営において最も重要な課題を最初にクリアすること

 不景気の最中で事業を始めて損益均衡を実現できれば、事業体として優位性を獲得した、又は、差別化を実現できたことに他なりません。しかし、景気が悪い時期に事業を始めるのは、周りの同意を得ることが大変難しく、また、金融機関等からの借入も難しくなるため、事業自体を始めるハードルが高くなります。そのハードルを下げるには、限りなく規模を小さくすることです。手持ち資金内で始めることや副業から始めることで、周りの同意は各段に得られ易くなります。

 不景気の中で事業を始めることは、経営において最も重要な課題を最初にクリアすることに他なりません。そして、苦しい時期を早めに体験することは、長期的に事業を継続するための最短ルートになります。不景気に事業を始める場合は、規模を小さくして、できる限り固定費を少なくして、少ない売上でも利益が出る体制を目指すことです。実現できた時は、景気が上向けば、自ずと売上が増えて、利益が増える仕組みが出来上がったことなります。

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