ビジネスにおけるピボットとは、事業の進むべき方向性を決めて進めてきたものを変えることですが、可愛らしい響きとは裏腹に苦渋の決断を要するターニングポイントでもあります。

ピボットが出来なかった故に事業が失敗

 このピボットが出来なかった故に事業が失敗してしまうことが大いにあります。サンクコスト効果(※)が正しくそうなのですが、当該事業に時間や労力、資金を掛ければ掛けるほど回収しなければという力が働き、ピボットしにくくなります。
※既に投資した事業から撤退しても回収できないコストのことで、埋没費用とも言います。 それまでに費やした労力やお金、時間などを惜しんで、それが今後の意思決定に影響を与えることをサンクコスト効果と呼びます。

 なぜ、そのような効果が働くのかというと、事業の方向性を決めるのは人ですから、人が介在することにより感情が介入してしまうからです。全てをやり切ってない中で失敗したとはなかなか思えないですし、また、失敗を認めてしまうことで周りからの自分の評価を落としてしまうことを懸念して、簡単には方向性を変えられない場合があります。

被害を最小限にするために小さなピボットから始める

 時間や労力、お金を掛ける前であれば、ピボットし易いのですが、事業がスタートするにあたり相応の労力や資金を投入している場合、スタート時点でピボットしにくい環境が出来上がっています。そのような環境において、事業が軌道に乗らずピボットの必要性が出てきた場合、重要なことは被害を最小限にすることになりますが、その方法はピボットする順番がポイントになります。

 サンクコストが積み重なっている場合、どうしても感情が介入してしまいます。冷静に判断するには感情を抑えなければなりませんが、その方法として、サンクコストが極力無駄にならないようにこれまでに作り上げた物を活用する小さなピボットから始めることが有効です。そして、徐々にピボット幅を大きくして、最終的に大きなピボットをできるような環境を作っていきます。

ピボットするための選択肢を作ること

 ビジネスが長期的にうまくいっていない場合、ピボットが必要なのですが、選択肢がなくピボット出来ない手詰まり状態になっている場合があります。では、手詰まり状態から抜け出させないかというと決してそのようなことはありません。選択肢というのは何かしらのアクションを起こすことで、選択肢が増えたり効果のない選択肢を潰すことができます。例えば、仕事が出来る人にフットワークの軽い人がいますが、これは沢山のアクションを起こして選択肢を増やしている効果もあるからです。

 手詰まり状態では、とにもかくにもアクションを起こすことが肝要です。できれば、アクションは本筋から近いことから試した方が良いのですが、現在ある経営資源の利用価値を様々な角度の切り口から見直し、別の方法で活用できないかを考えてみる必要もあります。別の方法で活用する(アウトプット)には、インプットが必要になりますので、手っ取り早くヒントを得るのは、他業界や他業種の方に相談することが有効です。当該業界の常識を知らないため、当該常識に捉われない発想をしてもらえるからです。

 そして、実際にアクションを起こしたら、そこからフィードバックを得て、新たな選択肢を作り、何度も何度もピボットしていくのです。限りある経営資源で事業を成功させるには、方法や手段にこだわらず結果にこだわり、アクションを起こして選択肢を増やし、成功するまでピボットを繰り返していくしかありません。

ピボットで世界最大の動画共有サイトへ

 当初計画していたことと違う方向に進み成功している企業が沢山ありますが、最たる例がYouTubeです。YouTubeは、PayPalのスタッフだった3名によって「Tune In Hook Up」という動画を用いたデート相手の出会い系サイトでスタートしました。しかし、本機能があまり活発化しない中で、機能の一つであった単なる動画共有としての利用者が増えて、この動画共有を中心にしたサイトへピボットしたことで、世界最大の動画共有サイトになったのです。

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